2023-12-11

細胞の蘇生

手技施術においてその目的は
「こりを柔らかくする事」「気血を巡らせる事」
に集約できると思います。
骨格の修正はその弛んだ状態で「操体法」や「力学体操」「動作指導」なので行い、さらに自分の骨格の気持ち良さを体感してもらって、その記憶の上書きをするというプロセスを私は使います。

さて、つまりまず余計な緊張を取る事は全てのスタートであり、体操などをしないで緊張だけをとって欲いだけの人にとってはそれが全てと言えます(そういう人も多くいます)
所謂「手技療法」において、固くなった肉を弛める事は絶対不可欠条件であり、必須の技術と言えます。

筋肉を柔らかくするというと、マッサージを思い浮かべるでしょうか。
よく自分で入浴中に脹脛をマッサージしています、という話もよく聞きます。
とにかく揉みほぐし、物理的に柔らかくして行きます。
しかし硬くなった筋肉というのは実はそう簡単に弛みません。まず物理的に硬直しているのと同時に、ご本人が常に固めようとする意識を与えているからです。
そうです、誰がその筋肉を硬くしたのかと言うと、ご本人です。そのクセになった意識を解除していないのに柔らかくしようとして外部からマッサージをする事は「筋肉の破壊」をしているだけです。
筋肉は硬くなるつもりのままですからね。
これはコンクリートを粉砕する作業に似ています。

コンクリートを粉砕して、一つ一つは小さくなって可動するかの様に思ってしまいますが、コンクリートそのものは硬いままです。マッサージでも同じ事が起こります。
これは「柔らかくした」とは言いません。粉砕しただけです。
では柔らかくするにはどうするのか。
コンクリートで言えば、固まる前の状態に戻す事です。
(こんなことは物理的に起こりませんが、細胞では起こります)

硬くなった肉は、もう自分ではかつてどれぐらい柔らかかったかを忘れています。
手を当て、導氣をし、誘導し、思い出させます。
つまり「柔らかくする」のではなく、「かつての本来のものに戻す」という作業です。意味が全く違ってきます。これは「蘇生作業」です。

この感覚が分かったのは、施術をして来て10年以上経ってからでしょうか。最近は特にこの感覚を大切にしています。これが可能になるには、とにかく施術者がこの現象を確信し、信じ、知っている必要があります。
施術する側が見ている世界以上の施術は絶対にできないからです。
塾の先生で「絶対に東大に行かせる」と思っている先生と、「最初から東大を考えていない」先生では、どっちの先生が東大に行かせる事ができる先生でしょうか。
これが、先ほど書いた「筋肉を硬くする意識」の解除にもつながります。

マッサージに慣れた人がうちに来られると、あまりに軽い力でコリに指を当てている事に驚かれます。
「そんな軽い感じで指を置いているだけで、どうしてコリが消えるのか?」と不思議がる人もいます。
逆に、体にはこの施術でアプローチしないとダメな部位もあります。絶対に力で粉砕にかかってはダメな部位もあり、氣を使う施術は最終的には必須だと思っています。

ちょっとだけ具体的に、どんな感じで蘇生して行くのかを書いてみましょう。
まず自分の手の氣を高めます。その手で患部に触れますが、手全体で触れる場合と指先でエネルギーを集中する場合に分けられます。私は指先が得意で、氣が満ちて来ると指先の感覚がなくなります。
この感覚は「同化現象」です。私の指先とお客様の体の細胞が同化した感覚です。
さらに氣が満ちるとものすごいピリピリした痺れる様な感覚が指先に走ります。
ここまで来ると対象の細胞はかなり蘇生しています。生きる事を思い出しています。
とても温かいですよ。ヒーターの様だとびっくりする人も居ます(それもその人の力ですが)。
腹部で行った際などは、お腹の中の方〜で熱源がある様な感じで、とても心地良いです。
最後に私の指の方を静かに押し返して来たら十分充実しています。

私はこういう話が大好きですし、そういう体へのアプローチの仕方が大好きです。
昔、中国整体をされていたという人が私の施術を受けた際に
「あ、先生、これはお弟子さんを取るのは無理でしょ?」
「これはご本人だけが掴んだ世界で、誰かに説明するのは無理でしょ?」
と言われ、気持ちが分かって頂けてとても嬉しかったです。

施術にせよ、他の事にせよ、その人が信じて見ている世界以上の事は起こりません。
私は信じているし、嬉しいし、楽しいのです。細胞が生き返る現象が。
その時の血が流れている感覚が、私の楽しみなのです。

体から出てきた言葉を書いて行こうと思います。 読んでくださってありがとう。

奥中伸
奥中伸
平成15年5月より奈良県大和郡山にて開業。奥中式腹部調律整体を中心にして体から余計な力を排除し、骨格を正して重力と親和させます。生きていくのに本当に必要なものは自分の中から湧き上がる。お問い合わせはお問い合わせフォームよりお願いいたします。
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