鮨
先日、東京出張の際に念願の「すきやばし次郎」(六本木店)に行って来ました。
有名なお寿司屋さんで以前から行ってみたいお店でした。
2007年にミシュランガイドで三つ星を獲得し、2011年に店主の小野二郎さんが主演のドキュメンタリー映画「二郎は鮨の夢を見る」が海外で公開され、2019年に小野二郎さんが「ミシュランの3つ星レストラン最高齢料理長」とギネスブックに登録されるなど、栄光が多すぎて一時期は一般客が予約できない状況にまでなったお寿司屋さんです。
ちなみに店主は小野二郎さんなのに店名が「すきやばし次郎」なのは、二郎さんが「店の名前として漢字の見た目がカッコいいから」という粋な理由からです。
一ヶ月前に予約の電話を入れましたが、その時点でお昼の前半は満席、後半の部でなんとか予約できました。
ちょうど六本木で用事があり、その後六本木ヒルズへ。
恐ろしいほどシンプルな店構えです。
予約時間の少し前に入店し、お鮨を待ちます。
時間ピッタリに映画で見た大将(次男さん)が出て来て、お弟子さん達が慌ただしく動き回ります。
お鮨はコースで15貫。その後に好きなだけ追加注文して食べれます。
私はその後も仕事があったのであまり食べずに15貫+2貫で出て来ました。
肝心のお鮨ですが…そりゃまあ信じられない美味しさでしたよ。
全てのお鮨が美味しかったですが、映画でも出て来たカツオのタタキが美味しすぎておかわりしました。
表面に火を入れたあとに藁の煙に燻らせたカツオは今まで食べた中で最高に美味しかったです。
「煙の味」が最高だったのです。
大将が「お好きなものを追加で握るよ」と言った時にすかさず「カツオ」と注文したのですが、その時に大将が「ニヤッ」とされましたね。
お鮨が大満足だったのは当然ですが、私が感心したのがお弟子さん達の動きでした。
三人ぐらい確認できましたが、全員坊主か角刈り。年齢は二十代でしょう。一切の無駄口がなく黙々と動いていました。
驚いたのは食事が始まると「はい!」の返事すら許されていなかった事です。おそらく、食事は大将とお客さんだけのもので、弟子が声で介入する余地などないという考えなのかなと察しました。
無言でテキパキと動くお弟子さん達でしたが、目の色と顔の血色が良く、厳しい環境ですが充実した納得を得て働いているのがよく伝わって来ましたよ。
ホリエモンは寿司ロボットが発達した事で「鮨の修行に10年とか15年費やす人はバカだ」と言ったそうですが、そういうことを言っているホリエモンこそバカだろうと思います。
お弟子さん達は単純に調理のテクニックを覚えているだけではなく「生き方」を学んでいるんです。
今の時代はよく「我慢はしない方が良い」「ブラック企業をやめて正解だった」「自分らしく生きれる環境が最高」とか言いますけど、あれ全部罠ですから。本当にしっかり生きている人は「辛抱」を覚えている。
辛抱は「芯棒」になりますからね。この先、生きて行く上で、辛抱した事しか自分を支えてはくれませんので。
食事中の大将との会話は多岐に渡り、けっこう政治的な話もあり意外な一面でした。基本的にはお鮨の説明が多かったですが、その中で大将が「鮨は度胸が試される」と仰っていて私の頭の中には腹部調律整体がすぐに浮かびましたが黙って聞き入りました。
鮨の仕込みには様々なものがあり、例えば先ほどのカツオは表面の火入れも一発勝負、煙に燻らすのも一発勝負。仕込みが足りなくて後からチョロチョロと調整したってもうダメなものはダメ。やりすぎてもダメ。適度な領域に一気に行かないといけない。単なる足し算ではなく、その勢いや意気込みが味に乗るんだろうと思います。
まさに腹部の整体と同じだなあと。
腹の肝要部分に一気に手を入れる。取ったら離さない。満ちたらサッと引く。どれも度胸が必要です。
話している大将は映画の時から時間が経過していてシワは少し増え、髪も少し薄く(失礼)なられていましたが、とてもとても良い顔をされていました。ああ、私もこんな顔の職人になりたいなあと心底思いましたね。
「もういい歳なんだよ〜」と言いながら「でもまだ親父さん(二郎さん)がやってるからね」と、しみしみ言いながら、自分も親父さんの様に生きるぞという確定した心の安定が伝わってきました。
親であり師匠であり尊敬する経営者であり、そんな存在を持つ者の誇らしげな「納得」がありました。
お鮨を食べ終わって、自分の体がなんとなく元気な感じがしました。翌日にそれは確信しました。
間違いなく魚や貝の命のエネルギーが自分の体に入ったのだと。
釣りなどをしていて、生きている魚を手に持つとすごく暴れますよね。その時の背骨を起点としたあの力強さって分かります?凄い力でバタバタと魚は動きますよね。あの力が体に入った感じです。
とても新鮮なお鮨を食べたから?それもあると思います。次郎のお店には築地(豊洲)で一番良い食材が卸されると聞きますし。
しかしそれだけではない様に思います。
あの職人の自信、お弟子さん達の動き方。
すきやばし次郎のお鮨には「命に対する尊厳」がある様に思います。同じ命を頂く上で可能な限りの気配りが行き渡っています。その食材を最大限に活かし切り最高に美味しく食べてもらう。最大の努力は投じるが、余計な事は一切しない。
私たちは他の命を殺して食べないと生きていけない。その時、人にできる全てのことをやり切る。
食材の持つ命のエネルギー以上に、活きたエネルギーを頂いた感じがしました。
銀座本店の二郎さんは今98歳。
食材という命を尊重する術を知る人でしょう。
いつか銀座本店に行ける日が来る事を願って。
ご馳走様でした。勉強になりました。
体から出てきた言葉を書いて行こうと思います。 読んでくださってありがとう。
- 平成15年5月より奈良県大和郡山にて開業。奥中式腹部調律整体を中心にして体から余計な力を排除し、骨格を正して重力と親和させます。生きていくのに本当に必要なものは自分の中から湧き上がる。お問い合わせはお問い合わせフォームよりお願いいたします。