2024-03-23

コリの扱い

整体では大きく分類して
・体を弛める
・体操などで体を整える
という二つの作業を進めます。
体を弛めるのは主に手技で直接体を触って体の滞り、コリ、拘縮を取り除いて行きます。
本質的な事で言うと「言葉」や「単語」を聞くだけでも体は弛んだりして反応を示しますが、ここでは主に手技での作業とします。
体が弛んだらその拘縮やコリを作った原因を考えます。人それぞれの原因がありますが、私がよく言う

『骨を骨として使えていないこと』

を是正して行くと体の手応えや座標感が掴めていき、硬いものを効率良く使う力学が分かって来ます。
力は硬いものを使って伝達されますので、骨を骨として使うと力がグングン伝わるのです。

ん?ちょっと待って、つまり我々は骨を骨として使えていないって事?
そうです。多くの人は筋肉で仕事をしようと“思い込んでいる”ので、筋肉で力を発生させ、その勢いでなんとか仕事をしようとしています。
筋肉は強靭なイメージもありますが、所詮は肉です。柔らかいものです。いくら力を入れても肉は肉です。
最初から力を伝える役割の骨とは違うものです。
筋肉で発生させた力は骨を伝って目的の地点に到達します。これを自然に行える様にするのに体操や操体法、時には座学で理屈を知ってもらいます。知る事で自分の思い込みに気付けるし、今の自分に起こる事は自分が知っている範囲の事しか起こりません。ですので座学も重要視して行っています。

では骨を骨として使えていない人は、何をしているのか。
筋肉を硬くする事で力を伝えています。これが「コリ」です。これは無意識にやっています。いちいち考えてやっていません。力学上、力が伝わらないので勝手に硬くして行きます。
これは作業や仕事でもそうですし、自らの体を支える事そのものでも行っています。所謂「姿勢が悪い」というやつですが、悪い姿勢は綺麗に力が足に落ちないので勝手に踏ん張っています。足腰だけでなく肩や首や腕も使って踏ん張ります。気付きません。そんなつもりは本人にはありません。
しかし傾いている家が補強しなければ立ってられない事を想像してください。その補強がコリです。
家は計算して建てますので力んで踏ん張っている家はありませんが、人間は色々な思い込みで生きれるので骨を骨として使えないと筋肉を硬くして対応してしまうのです。

さあ「コリ」は厄介な奴だなと。早く凄腕整体師さんに弛めてもらって、正しい姿勢や力学を知ってコリなんかとはオサラバしたいと思いますよね。しかし私は人のコリをずっと触ってきて、「どうして人は自分でこんなものを作ってしまうんだろう」と思い、コリってそんなに悪者なのか?なんやかんや皆んな生きているじゃないか、と考える様になりました。何故なら、大きなコリを持っている人は、大きな自信や大きな「納得」を持っている気がしたからです。体がボロボロの人の方が不足を言わない傾向を感じたのです。

私は母の体もたまに診ます。あと、先日は84歳まで現役で鉄工所を1人で経営されて来たお父さんの腰を診ました。どちらの体もコリだらけです。どちらも私なんかの若輩がどうこう言える人生ではないでしょう。必死に行きて来た人のコリです。そんなコリをただ悪いものだ、無くなれば良いで処理できるのか。
要するに人のコリとは「とにかく頑張った証」なんです。必死に生きた証です。
人の体を触らせて頂きながらそんな風に思うときが、ある時からあったのです。
このコリはどんな苦労があったのだろうか。どんな風に力を伝えようとしたのか。何を行おうとしてこんなにコリが必要だったのか。
そのコリに触れて、じわじわと手を深めてみて、その人の頑張りを、ただじっと感じるのです。
なにも言えません。心の中で「お疲れ様」「ありがとうございます」と思うだけです。
姿勢の事とか力学の事とか、そんな事は知らないけど、とにかく頑張って生きた証です。
そのコリが今は体にとってとても邪魔をしている。場合によっては痛みも出ている。だからコリは取るしかないんですが、でも、この目の前のコリは悪い奴じゃないんです。必死だっただけです。
そう思って手を入れると、スッと消えてくれるコリが多い事も知りました。
肉体は絶対に想念を持っていて理解していると思います。そしてそれは、本当の事しか通用しない会話なのだと思います。コリがあるって事は、実際に何かをしようとしたって事ですから。文字や口だけでなく、実際に肉体を使って何かをしようとしたって事ですから。それは、本当の事です。

私は去年から仕事のスケジュールが変わり、色々と大変で自分の体はコリだらけです(笑)。
でもコリがあるとお風呂は何倍も気持ち良くなるし、人に触ってもらうと何倍も心地よいです。
セラピストにツボを取られるとギャーギャー叫びながらも「最高最高、もっと押して」と言っています。
コリがあると心地良さのハードルが下がるんです。
だからやっぱり「コリ」は、悪い奴じゃないと思います。

体から出てきた言葉を書いて行こうと思います。 読んでくださってありがとう。

奥中伸
奥中伸
平成15年5月より奈良県大和郡山にて開業。奥中式腹部調律整体を中心にして体から余計な力を排除し、骨格を正して重力と親和させます。生きていくのに本当に必要なものは自分の中から湧き上がる。お問い合わせはお問い合わせフォームよりお願いいたします。
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