2024-02-02

一人相撲

人はほぼ思い込みで動いています。
物を拾うとはこういう事だ、歩くとはこういう事だ、姿勢よく坐るとはこういう事だ、リラックスとはこういう事だ。
当然ご本人はそこまで意識していなくとも、深層心理、無意識の領域で作っています。
これがある意味その人の個性とも言えるのですが、人体力学から言えば無駄な思い込みで重力に反抗する動作を生みます。重力は凄まじい力で常に掛かっていますので、これは馬鹿にできないのです。

この思い込みは様々な要因で作られています。子供の頃の周囲の大人の動き。昔見たドラマ、映画。誰が好きか嫌いか。好きな人の動きは真似したくなるし、その中で「重いとはこういう事」「軽いとはこういう事」「早いとはこういう事」「ゆっくりとはこういう事」等の概念も育てています。
人は自分で作ったイメージを実現するために自分の体を使ってそれを具現化し、それを自分で確認しています。これは他人が介入するにはそれ相応の価値を提供しないと変わらないのです。

この自分で作り上げたイメージは、そりゃ勝手にやっている分には良いのですが、実領域では重力がかかっていますのでイメージと重力下の力学に齟齬があると体に余計な力がかかります。これに拮抗するためにまた余計な力を加えます。この結果、体に定常的な“コリ”を生み、それが体の歪みを作ります。本人は気付きません。
歪んだものは重力下では「コケる力」を発生させます。自分のイメージが発端で、自分でコケそうになっているのです。それはそれはご苦労様なことです。しかし当然ご本人はそんな意識はなく、今日もせっせとイメージを踏襲するために体を使います。

常にコケる力が掛かっていますので、これまた無意識にコケないように踏ん張っています。ここでまた余計な力を使っています。イメージの為に余計な力を使い、そのせいでコケる力を発生させ、それでコケない様にまた力を使う。まさに一人相撲です。全ては最初に思い描いたイメージから出発しています。
イメージとはそれほど強力で怖いのです。

私はこの人がコケない様に踏ん張っている力をどうやって抜こうかとあれこれ考えました。それが仕事ですからね。イメージが出発点ですが、ここを変えるのは容易ではなく、「手垢の付いていない日本語」なんかを駆使してその人の思い込みを一つ一つオーバーライドして行きました。これはこれで結構効果があります。
しかしコケる事を嫌がっているのであれば、いっそ、その方向にコケたら気が済むのではないかと考え、「コケる整体」を考案しました。
結果は…恐ろしく有効です。これは逆ホメオパシーみたいなもので、その人が深層心理で怖がっている世界には、いっそその方向に向かわせてその世界を体感した方がよっぽど良いのです。
そもそも「コケる恐怖」もイメージです。勝手に作った恐怖です。実際に体感すると、実は大した事ない事が殆どです。整体で行う場合はむしろ気持ち良いのです。怖くないと分かれば、もう余計な力は要りません。

ここで面白いのが、コケると最初のイメージまでもオーバーライドされて行くのです。コケる事でコケないように踏ん張っていた力が抜けるのは分かりますが、発端の思い込みの方も綺麗になって行きます。
一つのエネルギーが完結して、自分の思い込みが間違いだったと体で納得するんでしょう。ご本人は意識にありませんが、外から見ていると体が綺麗になって行きます。体って可愛いなあと思います。

この「コケる整体」は、それ相応の技術が必要なのでネット等では説明しません。危ないですからね。でも大人になるとコケる事もすくなくなり全てを安全牌の中で行っていますので、コケると皆さん子供みたいな笑顔を見せてくれます。コケるのは楽しいんです。
これはつまり、コケることを避けると楽しくないんです。一人相撲が始まります。
今の世の中が生きにくいと言われて久しいですが、これって皆んながコケる事を避けて一人相撲しているだけじゃないかと、思ってしまいます。
コケたくなったら、どうぞ来てください。

体から出てきた言葉を書いて行こうと思います。 読んでくださってありがとう。

奥中伸
奥中伸
平成15年5月より奈良県大和郡山にて開業。奥中式腹部調律整体を中心にして体から余計な力を排除し、骨格を正して重力と親和させます。生きていくのに本当に必要なものは自分の中から湧き上がる。お問い合わせはお問い合わせフォームよりお願いいたします。
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